安倍総理の歴史認識に対する戦略(補足)

以下は国会質疑の安倍総理の答弁の一部を抜き出して書き起こしたものです。少し前のものですが。
 
平成18年10月3日 本会議 質問者:志位和夫
靖国神社の戦争観、歴史観、私の靖国神社参拝についてお尋ねがありました。
 政治家の発言は政治的、外交的な意味を持つものであることから、特定の戦争観、歴史観の是非について政治家が語ることについては謙虚であるべきだと考えております。」

政治家は政治的思惑抜きでは語れないから言わない。あるいは政治家が語ると歴史観を決めてしまうから言わない。またはその両方の、政治家が語ると政治的思惑で歴史観を決めてしまうから言わない。このあたりでしょうがこれだけでははっきりしません。いずれにしろこの科白は多用されてますので戦術的に練って作られた科白であろうことが伺われます。安倍総理の思惑はこの言葉に込められてると思われます。
 
歴史認識についてのお尋ねがありました。 さきの大戦をめぐる政府としての認識については、御指摘の記述を含め、平成七年八月十五日及び平成十七年八月十五日の内閣総理大臣談話等において示されてきているとおりであります。
 一方、先ほど申し上げましたように、政治家の発言は政治的、外交的な意味を持つものであることから、歴史の分析について政治家が語ることについては、やはり謙虚であるべきだと考えております。」

これは文章としては繋がってません。でも即座に続けて言ってます。但し書きをつけるかのような繋げ方です。村山談話を継承すると。でも政治的なものだからねと。こういうことではないかと思います。間接的にであれ語っておいて語らないといってるのですから矛盾があるのですが、これは談話に対する暗黙の内での批判でしょう。私は突っ込みません。
 

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平成18年10月5日 予算委員会 質問者:菅直人
河野談話について
「いわゆる従軍慰安婦・・・」
安倍総理は“いわゆる”を外しません。ここに拘ってることがわかります。
従軍慰安婦いう呼び名で呼ばれてる人のことで従軍慰安婦ではないということです。
わざわざ解説しなくてもわかるでしょうけど。
 
「政府として出された談話」
「政府として受け継いでる」

政治的なものだってことです。政治に関心の薄い一般の人には伝わらないであろう言い方ですが、とりあえずそういう事。
  
村山談話について
「この談話は閣議決定されたもので、内外に対して国の政府としての考えを述べたもの」
政治的なものだってことです。
 
「この談話について新たな談話を作って作新する考えは持っていない」
安倍総理が新たな談話を出す事は期待出来ません。今その考えを持ってないだけという見方も出来るのですが、謙虚であるべきですからまずないでしょう。
 
「(引き継ぐかについて)私も総理大臣でありますから当然であります。」
別に当然でもないのだけど・・・ ここでの“当然”は大して影響無いからいいけど、総理は過去の政策を継承するのが当然と考えていそうで心配。継承して欲しくない政策が沢山あるのでこの“当然”は不満。
 

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 平成18年10月6日 予算委員会 質問者:志位和夫
 
靖国史観の是非について
歴史認識については政治家が語るということはですね、政治的外交的な意味を生じるということになるわけでありまして、そういうことを語るについてはそもそも謙虚でなければならないと思ってまして(中略)政府としてコメントするのは適当ではない」
靖国史観についても否定しない。安倍氏であれば別に驚きでも何でもないけど、日本の総理として靖国史観を否定しないってのは結構な進歩だと思う。本当は肯定して欲しいところだけど政治が止まるのでそこまでは私は求めない。対北朝鮮で色々やらなければならない。空転させてる場合ではない。
 
謙虚について
「語る語らないという事よりも、これはこういう歴史観でなければならないとか、あるいはこれはこうなんだということを特定することは出来ないということでありまして」つまり安倍総理の謙虚にというのは歴史観を特定しないということ。
 
嘗ての村山談話に反対する議員連盟の活動について
「こうしたことを国会で決議するのがおかしいのではないかというのが中心ではなかったかと思います」
何がおかしいかまで言ってないのでよくわからない。ただ、歴史観を否定しようとしたという指摘に対しての答えなので(否定も歴史観への言及になる)そういったものを決めようとしたのがおかしいということだったのだと言いたいことはわかる。
 
「いわゆる侵略戦争ということについては国際的な定義として確立されていない」
侵略は認めても侵略戦争(侵略を目的とした)とまでは認めてない事がわかる。判り辛いですけど。わかる人にしかわからないでしょうけど。
 
個人としてどうなのか?
「私は総理としてこの場に立っているのでありまして、総理大臣として答えます」
政治的な発言だって事ですね。
 
文書に書かれた事が事実かどうか、
中国に対する支配権を目的とする戦争であることが事実であったと認めるかどうか。

「そうした歴史の出来事一つ一つの分析についてはですね、それを分析することは私は政府の役目ではないと考えております。まさにそれこそ歴史家が資料を集め、証言を集めながら分析していくことではないかとこのように考えております。」
政府では決めないので歴史家が資料や証言を集めて自由に分析して下さいってことです。
 
太平洋戦争の基本的な目的
「当時の色々な決定、出来事についてはですね、例えば当時の日本を巡る状況や国際社会の状況もあるでしょうし、どういう時代であったかという分析も必要でしょうし、歴史は連続性の中で見ていくことも大切ではないかと。ですからそういう事象について今ここで政府としてそれはどうだったかということを判断する立場にはないという事でございます。つまり一定の、政府としてこういう考え方に立って、歴史を判断するという事は、私はしないという事でございます。
まあ、共産党としてはマルクス史観に立って全てを決めていくということかも知れませんが、こういう事柄については先程来申し上げてるように正に歴史的な分析を政治家がするべきではないかと思います。」

政府で決めることはしないと。当時の日本を巡る状況・国際社会の状況・どういう時代であったか・歴史の経緯の分析で見なければいけないと。それを歴史家がすべきだと。政府でなく、政治家でなく、歴史家がすべきだと。
 
 
政府では決めないし縛らない(決めさせないし縛らせない)
歴史家の分析に任せる(任せるからやってくれ)
上記の国会答弁からこれが安倍総理の考えだと読み取れます。
これならこれでもっと強く誰にもわかるように言って欲しいのですが。その点はかなり不満です。
 
志位委員長の質問の方は突込みどころ満載なんですけどねぇ。意図的か無意識でか知らないけど安倍総理に発言趣旨を取り違えた的外れな質問ばっか。志位委員長が「自存の為にと書いてあるんですよ!」と力説するあたりは笑えます。自存の為なら自衛戦争じゃんw 見たくないという人多いでしょうけどじっくり聞くと笑えます。
 
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安倍総理歴史認識を変えたなんていうのは左翼の「勝手に勝利宣言」です。安倍総理は何も変えてません。安倍総理の批判は結構ですか、安倍総理の考えを理解した上での適切なものでなければ安倍総理には伝わらないと思います。政府が主導して歴史観を変えろと言っても安倍総理は聞かないでしょう。考えを理解した上でもっとこうすればいい、あるいはここは変えなければ駄目だとかであれば耳を貸してもくれるでしょう。そう思います。
また、既に安倍総理はこの戦略で国会答弁を重ねてます。途中での変更は難しいでしょう。安倍氏が総理でいる間はこの安倍氏の戦略に合わせて行動しなければならないのではないかと考えます。自分は安倍総理の後を考えて飽くまで政府主導による歴史観の修正を求めるというのならそれはそれで結構ですが。
 

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私が10月17日のプログで書いた安倍総理の戦略は「政治の側で歴史観を確定することを防ぎ、政治で決められた歴史観を正しくないものとし、歴史観に関する政治的な縛りを解いた上で民間の側で歴史観の中身を正してもらう。」でした。これは国会答弁だけでなくTVの討論番組での発言も参考にして推察したものです。討論番組での発言の方は掘り起こせませんので今回のような分析をしてみせる事が出来ません。私の推測が合ってるかどうかは今後の安倍総理の発言から各々判断して下さい。
ところで衆参HPに載せられてない国会の会議録をネットで手に入れる方法はないのでしょうか。誰か手に入れる方法を知ってたら教えて下さい。お願いします。
 
 
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追加

「首相が言うように、政治家が過去の歴史認識を左右してはならない。私が教科書問題で訴えたのは、専門家の意見も二分している(従軍慰安婦などの)問題を、一方的に教科書に載せるのは不適当ということだ。ただ、教科書検定制度を見直す考えはない。」

中川昭一日教組の一部活動家は免許剥奪だと言った時の言葉です。中川政調会長安倍総理と共同歩調を取ってます。