司法による事実上の立法の例

3号被爆者手帳訴訟判決要旨
http://www.sannichi.co.jp/kyodo/news.php?genre=Detail&id=2009032501000465.xml

これにツッコミ入れる形でコメント挟んでいく。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  
3号被爆者手帳訴訟判決要旨
広島地裁


 3号被爆者の手帳交付をめぐる訴訟の判決要旨は次の通り。
 【被爆者援護法1条3号「原爆放射能を受けるような事情のもとにあった者」の解釈】
 原爆医療法は、原爆投下から10年以上が過ぎても被爆者に障害が起き、科学的な知見も確立されていなかった事実を踏まえ(これは法律には書いてないこと)健康診断などで不安を一掃することなどを目的として(「高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策」が目的で、不安の一掃は法律にはない)制定された。
 また同法2条3号の制定過程をみると、射線の影響を受けた「おそれ」という文言を用いることが検討され(ここで検討となってるのは、最終的には用いられなかったから。つまり「おそれ」の文言は却下されてる)その後法案成立までに基礎的な考え方に実質的な修正が加えたとは認められない(修正とかでなく、採用されなかった
 さらに厚生省が3号被爆者の定義についてあえて抽象的放な文言の規定を設けた経緯などから、立法者の意図を勘案すると(この勘案があやしい。誰が勘案? もちろん裁判長)同法2条3号に該当するかどうかは、最新の科学的知見を考慮した上で、放射線の影響を受けたことを否定できない事情があるかという観点から判断することが予定されていたと言える。(これがまるごと裁判長の勘案)
 また原爆医療法制定から被爆者援護法制定に至る法改正や背景を検討すると、原爆投下から50年が過ぎても放射線の晩発被害は収まらず、科学的に解明されていないこと(解明されてないのはその通りだけど、法律には書かれてない)被爆者の健康管理の充実・強化や生活援護も進められ、その成果を基礎として被爆者援護法が制定されたこと、同法の前文が、高齢化が進む被爆者への国による援護を目的に掲げていることが認められる。
 これらを総合勘案すれば、被爆者援護法も原爆医療法と同様、放射線の影響が完全には解明されていないという事実を踏まえ(法律に書かれていないものを踏まえてる被爆者の不安を一掃し(法律にはない)障害を予防・軽減(予防はない)することが一つの目的と言える。被爆者援護法の1条3号に原爆医療法2条3号の規定がそのまま引き継がれたことなどを併せ考えると、被爆者援護法1条3号の解釈は、原爆医療法2条3号の解釈が妥当すると解するのが相当だ。
 現在の科学的知見を踏まえると(法律でないものを判断基準に加えてることに注目)、救護所など負傷した被爆者が集まっている環境にとどまった者は、実際に救護・看護をしたかや、救護・看護した者に背負われたり、一体となって行動したりしたかにかかわりなく、救護所などに立ち入らなかった者に比べて放射性物質を体に取り込む危険性が大きかったといえる。(危険性が大きかったと言っても、危険性ほぼゼロの者と比較しての話)。少量であっても取り込めば影響が生じる恐れ(先の「おそれ」という文言の検討がここに掛かる)が高まることは否定できない。
 原爆投下から間もない時期(目安として約2週間)に、被爆者が集まった環境(どのくらいの面積にどれだけの人がいたかということだけでなく、閉鎖された空間だったかも考慮すべきだ(誰の言ってる“べき”? そう裁判長))の中に相応の時間とどまった者については、放射線の影響を受けたことを否定できないというべきだ。(「射線の影響を受けたおそれ」があると。でもこの文言は法律にはないのですよ。)


 【却下処分の違法性】
 原告はいずれも原爆投下後、被爆者が多数集合していた環境の中に相応の時間とどまったと認められこれは裁判長が、様々な要素を勘案して導き出した基準。裁判長の定めた新基準。)全員に被爆者援護法1条3号の要件が満たされる(裁判長の定めた基準を満たすので被爆者援護法1条3号に該当すると)従って被爆者健康手帳交付申請を却下した広島市長の処分は違法である。(裁判長が、法律に書かれていないことを含めた、様々な要素を勘案して導き出した基準と違うから違法なんだと言ってるわけです。)


 【国家賠償法上の損害賠償請求】
(以下略)


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇ 
これは「被爆者が多数集合していた環境の中に相応の時間とどまった者には被爆者健康手帳が交付される」という法律を作ったようなもの。司法による事実上の立法。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

改めて、大元の『原子爆被爆者に対する援護に関する法律』から。

まず始めに、
第一条  この法律において「被爆者」とは、次の各号のいずれかに該当する者であって、被爆者健康手帳の交付を受けたものをいう。


この法律でいうところの「被爆者」は、次の各号のいずれかに該当するというだけでなく、被爆者健康手帳の交付を受けたもの。各号のいずれかに該当するだけでは、この法律でいうところの被爆者ではないということ。


次に、
被爆者健康手帳)
第二条  3  被爆者健康手帳に関し必要な事項は、政令で定める。


で、その申請の条件。
3 死体の処理及び救護にあたった者等(救護施設などで10人以上(1日当たり)の被爆した方の救護や死体処理などに直接従事した者,または当時の市域を結ぶ線内の海上被爆した者)


これに該当するものが、被爆者健康手帳の交付を受けるというのが、『原子爆被爆者に対する援護に関する法律』の定めるところとなる。訴えた者達はこれに該当しないので、被爆者健康手帳が交付されなかった。こうして考えれば簡単な話。これに法律に書いてあること以外の様々のことを入れ込んで、法に沿った判断と違う判断を司法が導き出したのがこの判決。
法に沿った判断をすべき司法が、法で定めたところと違う判断をしてる。そしてそれを法がそう規定してるのだと言ってしまってる。これは司法による事実上の立法行為。


被爆者健康手帳が交付されないことが不満であれば、申請の条件を決める政令の改定を求めるというのが本来の形。政令を改定すれば、今現在交付の対称でなくとも交付の対象になる。この者達に被爆者健康手帳が交付されるということにもなる。これを目指すのが、この裁判の原告のすべきこと。




(参照)
3号被爆者手帳訴訟判決要旨
http://www.sannichi.co.jp/kyodo/news.php?genre=Detail&id=2009032501000465.xml

原子爆被爆者に対する援護に関する法律
http://www.gensuikin.org/data/engoho.html

被爆者健康手帳
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A2%AB%E7%88%86%E8%80%85%E5%81%A5%E5%BA%B7%E6%89%8B%E5%B8%B3



人気blogランキングランキングバナー