自己抑制から見た四つの社会

社会を秩序あるものにするには、その社会の中の個々人には少なからず自己抑制が必要になります。簡単に言うと、「身勝手なことをしない」です。この「身勝手なことをしない」にも色々あります。


まず一つ目、宗教的戒律に対して。
二つ目、決まり(法律)に対して。
三つ目、階級上位者に対して。
そして四つ目、周りの人に対して。


宗教的戒律の場合は、戒律に合致してるかどうかを気にします。
他の人がどう思うかは気にしません。
人がどう思うかを気にせず、振舞います。


決まりの場合は、決まりに合致してるかどうかを気にします。
他の人がどう思うかは気にしません。
人がどう思うかを気にせず、振舞います。


階級上位者の場合は、階級上位者がどう思うかだけを気にします。
階級が自分より下位の者がどう思うかは気にしません。
上役にはペコペコ、下の者には尊大に振舞います。


周りの人の場合は、皆がどう思うかを気にします。
階級の上位下位関係なく気にします。


大雑把に例えると、
イスラム圏の国みたいなのが、宗教的戒律の場合の国。
弁護士が跋扈する米国みたいなのが、決まり(法律)の場合の国。
北朝鮮のような独裁国家が、階級上位者の場合の国。
そして日本が周りの人の場合の国。
上記のそれぞれで、『どうにも合わせられないという人』を他の大勢の人々はどう扱うか。


宗教的戒律の場合。
戒律に合わせないなんてのは許されません。戒律に合わせることを強いられます。それでも合わせないとなれば、追い出すか、殺すか。宗教は容赦がなく、ドラスティックです。


決まりの場合。
その者が決まりを犯してないなら、どうぞご勝手にと放っておくでしょう。
決まりを犯した時は容赦なく処罰となりますが、決まりで縛るのは特別悪いことだけなので、それにさえ触れなければ放っておきます。かなり自由です。


階級上位者の場合。
皆に合わせる必要はありませんが、階級上位者には絶対的に合わせなければなりません。逆らうことは許されません。逃げることも許されません。力づくで従わされます。


周りの人の場合。
違うことをしていれば、合わせるように求められます。戒律のような絶対的正義に基づいてでも、従わなければ処罰するという力ずくでもないので、強硬に求めるというものにはならず、周りの者達があまり強くならない程度に、ただしその分時間を掛けて求めてきます。分かりやすく言うと、皆が寄って集ってネチネチと言ってくるということです。


自由度で言えば、宗教的戒律の場合はガチガチで自由度僅か。階級上位者の場合は相手次第だけど、こういうのは自由とは言えないでしょう。一番自由なのは決まりの場合。周りに合わせることを求められる日本が嫌だという人はこれがいいと思うでしょうね。周りの人の場合は、、、後回しにします。



次は、「合わせられる人」にとって、それぞれがどんな社会になるか。


宗教的戒律の場合、
皆が同じ宗教を信奉する信者で、それぞれが強く自己抑制する社会です。
自由度は低いですが、互いに助け合う安心して暮らせる社会になります。


決まりの場合。
これは弱肉強食の世界になります。決まりの場合、捕まらなければ処罰されないので、上手く逃れられる者、捕まえる者を逆にやりこめるだけの力を持つ者は、決まりがあっても自己抑制しません。普通の人も自由な分、自己抑制は低く、全体的に自己抑制が低く、抑制は他から強いられるものが主となります。力があれば、他からの抑制を撥ね付けて自由に振舞え、力が無ければ、力ある者の身勝手な振舞いに抑えつけられてしまう。そんな弱肉強食の社会になります。力があれば天国ですし、力を持とうとする人にはやり甲斐のある社会です。落伍したら悲惨です。そんな両極端な社会。


階級上位者の場合。
上に対しては自己を完全に抑制。その分、下に対しては身勝手し放題。
上位者はやり放題で、下位者は一方的に虐げられる社会です。
これだけで十分でしょう。後の説明パスします。


周りの人の場合。
それぞれが周りに合わせて自己抑制する社会で、皆が強く自己抑制するから、警戒心や緊張感と無縁の気楽にのほほんと暮らせる社会になります。自分も周りの人に合わせますが、周りの人も自分に合わせようとしてくれますから衝突することも少なく、平穏な日々を送れる社会です。



で、問題はどの社会がお好みか。どれを選ぶか。
力がある人、自分の力を思う存分にふるってみたい人は決まりの場合の社会がお好みでしょう。力があり、人々を支配して自分の言いなりにしたいなんて人は、階級上位者の場合の社会。悩み事からの開放をお望みの人は宗教的戒律の場合かな(正直これはよくわからん)。お気楽な平穏が望みなら周りの人の場合の社会。これは好みの問題です。どれも、合う人にとっては暮らしやすい社会ですし、合わない人にとっては暮らしにくい社会です。どれも、良いところがあり悪いところがある社会です。いいとこ取りは出来ません。パッケージで考えて選択しなければなりません。



注)このエントリーは、周りの人に合わせることを求められる日本の社会で、窮屈な思いをしてる周りの人に合わせられない人は他の社会だとどのように扱われるかというところを出発点として書いてます。実はこれはあるものに対するレスの一部でして、それを知らない人には不自然な構成にみえると思いますが、まっご勘弁を。