型と枠、地方分権

近年、地方分権を訴える声が大きくなってます。地域主権地方主権といった言葉で、主権を地方にという声も出てきています。その地方主権を求める人達の主張はこのようなものです。

【中央集権、画一的政治・行政の弊害】


 地方主権を今日提唱するのは、これまでの中央集権的、画一的な行政・政治を改め、地方ごとに異なったニーズに柔軟に対応出来るシステムが必要であるからである。これまで効率的であったと思われたシステムが、いまや時代の変化に対応できない硬直的なものとなり、かえって効率をも妨げている。


 現在、地方自治体が地域の実情にあった政策を立案し実行しようとしても、国からの制約によって自由に出来ない状況になっている。また一方では、あまりに中央依存が長く続いたために、地方自治体が本来の自治体としての機能を失い、国あるいは都道府県の出先機関になってしまって、住民本位の問題解決を行う意欲も能力を失ってしまっているものも多く見受けられる。力のある自治体が自由にその力を伸ばしていくためにも、また、力の弱い自治体が一歩でも自らの足で歩みだすようになるためにも、自分たちのことは自分たちで決めて実行する、という当たり前の原則を確認しておかなくてはならない。


 現在の状況のもとでは人材は地方に育たず、定着せず、これがさらにこの中央依存傾向を強めている。地域の住民も地元の自治体の政策に関心も示さず協力もせず、この傾向にさらに拍車をかけている。地域活性化をいくら唱えてもこれではほとんど実現不可能である。一刻も早くこうした悪循環を断ち切らなければならない。

社)行革国民会議 地方分権研究会 「地方主権の提唱」
http://www.mmjp.or.jp/gyoukaku/teishou.htm#


上記からの一部抜粋です。
中央集権で全国一律は良くない。その通りでしょう。地方ごとの、その地にあった行政が必要。これもその通りだと思います。「時代の変化に対応できない硬直的なもの」というのは微妙です。対応するのが「時代の変化」なら、より広範囲に目を配る中央集権の方が対応しやすいです、本当は。でもまあ、図体のでかい国より地方の方が小回りが利く、変化に対応しやすいというのはその通りですし、今の日本の中央が、時代の変化に対応できない硬直的なものとなってるのもその通りです。こんな感じで、上記引用の内容には概ね同意です。地方が自由に出来ない、地方が機能を失い、中央任せになってる。無力な地方自治に住民は関心を持てない。私もそうだと思います。そして、それではいけないと私も思います。が、だからといって私は地方主権を訴えようとは思いません。この地方分権の問題は、枠と型のバランスの問題です。


上記引用の内容を、私なりに枠と型の問題として書き直します。

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中央の行政・政治がつくる決まりを、これまでの中央集権的な中央が地方に指示する型の決まりから、地方が地方ごとに柔軟に対応することを許す、大枠のみを決める枠の決まりに改めることが必要。これによって、地方は地方ごとに異なったニーズに柔軟に対応出来るようになる。小回りの利く地方が、地方自身の判断での状況の変化に合わせた素早い対応が出来るようになる。
決まりは、時が経つに連れ煮詰められ、段々と細かく具体的になってくる。以前は煮詰め不足故に幅のあった中央の作る決まりが、いまや幅の殆ど無いガチガチの型の決まりになってしまい、非常に効率の悪いものになってしまった。地方のことを知らない中央が作るガチガチの決まりは、地方に合ったものにはならない。中央の出す全国一律の決まりが、それぞれで違ってる各地方の状況に合うものになるはずもない。効率が悪いどころか場合によっては有害にすらなる。最終的にどのようなやり方にするかは、その地の状況を知るその地方に任せた方がいい。中央がそこまでを決めてはいけない。


現在、地方自治体には中央から沢山の「こうしなさい」という型の決まりでの指示がきており、地方はそれと違うことが出来なくなっている。地方自治体が地域の実情にあった政策を立案し実行したくとも、それをすると中央からの指示である型の決まりに反することになるから断念せざるを得なくなっている。自身で判断して決定することが出来ないのだから問題解決を行う能力はまるでなく、能力がなくて出来ないのだから、問題の解決をしようとする意欲も湧かず、あっても無くしてしまう。こんな状況では地方自治体が独自の政策を立案し実行する能力を持つことは不可能、それが出来る人材も育たない。結果、地方は中央の指示を実行するだけの中央の出先機関でしかなくなっている。住民の関心は、決定を下してる中央に向く。地方自治体の目も、自らへの指示の出し手である中央に向く。地方のことを誰もが蔑ろにする。地域活性化をいくら唱えてもこれでは実現しない。中央はどんどん強くなる。地方はどんどん弱くなる。一刻も早くこうした悪循環を断ち切らなければならない。

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私の見方だとこうなります。
このようになる原因は、中央が型の決まりで細かく地方に指示を出してしまうからだと私は見ています。中央で全てを決定してしまい、地方に裁量の余地がないからです。であれば、やるべきは地方に裁量の余地を与えることです。中央の作る決まりを、地方独自の裁量を許容する許容範囲の広いものにすることです。
許容範囲を広げさえすればいいのです。それで地方には裁量の余地が出てきます。その地に合った独自の政策を立案し、実行する余地が出てきます。独自の政策を立案し実行することが可能になり、やるようになれば、能力もついて来るし人材も育ちます。住民も関心を持つようになります。地方の独自性を発揮しての活性化も可能です。効率化だってします。中央の作る決まりを型から枠に変えるだけでいいのです。それで十分。ここまでに出てきた問題を解決するのに、権限の全面移譲である地方主権まで実現する必要はまったくありません。


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余談:
「ルールの縛りがキツくて窮屈! 窮屈だからルールなんか無くせ!!」
「キツくて窮屈なら緩めりゃいいじゃん」
「皆、自分がやりたいようにやればいいんだ!」
「いやいや、そこまで許したら不味いって」


わかってさえいれば、この四行だけで説明は十分なんだけどね。つーか、前のニ行だけで十分。上の長々とした文章読むよりこっちの方が遥かにわかりやすいと思う。だけど、こんなもんでわかるなら今のようにはなっていないでしょう。だからと、詳しく説明しようとすると長くなる。長くなると、迷うポイントが増えてわかりずらいものになる。どうしたもんですかねぇ・・・